現状把握から始めよう

「毎月の試算表に,在庫額を反映させたほうが良いでしょうか」という質問がありました。

ある会社には特に必要ないと答え,もうひとつの会社にはあると答えました。なぜ違いがあるのでしょうか。

特に必要がないと答えた会社は金額的にも質的にも問題がなく,さらに月末在庫額に大幅な変動もなく,粗利率に影響がなかったからです。

もうひとつの会社は,数ヶ月後の納品のために数百万円の仕入をされたという経緯がありました。これは通常以上の在庫数があるということです。

そこで会計事務所から送られてきた試算表は赤字であったので,この会社の社長は自身の感覚とは違和感があったためとまどいがあったように私は感じました。

それで,前期決算書の在庫とその直近試算表の在庫金額が同じであったので在庫を反映させていないことがわかり,粗利率が大きくダウンしている試算表になっていることをお伝えしました。

また,在庫数を控除すると前期並みの粗利率をキープしている現状に安心されました。

また,もし借入を必要とする場合,金融機関にこのような状態(赤字)の試算表を出すのは大変不利であり,良い結果につながらないこともあります。

なぜこのような試算表になっているかを社長が説明できれば金融機関側も納得がいくでしょう。

常に社長は会社の現状を把握する必要があると言えます。

ただふたつの例のように同じ質問であっても会社の状況によって異なるアドバイスになるように,試算表を読み解き会社経営に生かすことは容易ではありません。

なぜなら,社長は自社の業界の専門家であり経営の数字の専門家ではないからです。

私は常に会社経営において,まず,会社の現状把握が大切だと申し上げています。

現状を把握できるものが試算表であり,決算書です。

これらには創業から現在までの経営数字の結果としての会社の歴史,歴代経営者の経営判断,現状が凝縮されているのです。

試算表,決算書から読み取れる現状を把握することこそ,次のステップ(課題の洗い出し,売上高アップ,人材育成等)につながると考えます。

すべては現状把握からはじまることを経営者の皆さんにお伝えしていきたいのです。

年に一度,健康診断を受けるように会社も現状把握をするために専門家のアドバイスを受ければ改善や発展のきっかけになるでしょう。

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